なかがき ともこ さん【福岡】 ~後編~
福岡を拠点に活動されている なかがきともこ さん。
前回は幼少期から高校入学までのお話を伺った。
後編は高校入学後の部活選びから現在に至るまでのお話。
\\ 前編はこちら //
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なかがき : 実は高校に入学してすぐ、教室から靴箱に向かう途中に、ある部活があって。そこに呼び込みされたんです。そこが演劇部だったんですよね。
c : じゃあ3年間は演劇部に?
なかがき : はい。笑 仮入部でいいからって言われて入って、5月にあった発表会に体験で参加させてもらったんです。それが終わったから、「漫研と美術部に興味があるんで行ってきます」って伝えた時に「え、ここまできて!?」と言われてしまって。それでそのまま入部しちゃったんです。
c : 美術から遠ざかっていますね。
なかがき : 顧問の先生からは「演劇は総合芸術なのよ!!」って引き止められた記憶があります。笑
c : 言わんとすることは・・・笑
なかがき : ただ演劇と言っても照明とかキャストとか役割があって。その中でも小道具を作ることが大好きでした。
c : 小道具を作る担当だったんですね。
なかがき : そうですね。キャストはやりたくないって言って。笑
c : そうですよね。美術部と漫研で悩んでいたわけですもんね。
なかがき : 私にはハードルが高かったですね。ただ、入部してくる子はほとんどキャスト志望の子で。「すごすぎる!」って感じましたね。
c : 積極的な子が多かったんですね。人数ってどれくらいいたんですか?
なかがき : 多い時で10人くらいです。少ない時は5人くらいだったかな。
c : そんな感じだと全員で道具作って全員舞台に立ってって感じになるんじゃないですか?
なかがき : 人数少ない時はですね。。。出たりもしましたね。。。小学生役を高校生でしました。笑
c : ふふふ。じゃあ美術部ではなかったけど、何かを作るっていうことはされていたんですね。
なかがき : 流されながらも創作するということにしがみついているところはあったと思います。
c : 創作に対する熱量がすごいですね。
なかがき : 私にはそれしかないと思っていましたね。
c : それはやっぱり小学生の時の陶芸体験があったから?
なかがき : そうですね。大学に進学する時も、絶対陶芸をするって決めてましたし。そこは迷いがなかったです。小学生の時の体験は、自分の中で良いものとして刻み込まれていたんだと思います。
c : 陶芸とずっと関わっていくなと確信したのはいつくらいだったんですか?
なかがき : 小5の時からうっすらあったものが、大学進学を機に確固たるものになりましたね。
c : 大学は倉敷芸術科学大学と伺っていますが、なぜそこに進学されたんですか?
【倉敷芸術科学大学のキャンパス内。なかがきさんの学び舎】
なかがき : 高校の時に画塾に通っていたんです。入学試験にデッサンが必要だったので。
c : そうだったんですね。
なかがき : その画塾でいろんな学校の卒業制作集を見せてもらって。そのなかでも、倉敷芸術科学大学の卒業制作集は、工芸に特化しているなと思ったんです。陶芸ももちろんすごいけど、ガラスもすごいなとか。
c : 卒業生が制作したものだと実際に入学したあとのイメージもつきやすいですよね。
なかがき : そうですね。その卒制集から工芸全体で盛り上がっている学校だなっていう印象を受けたんですね。それで進学先として決めました。
c : 倉敷芸術科学大学のHPを見たんですけど、いろんなジャンルの先生が在籍されていますよね。
なかがき : いろんなところから先生は集まってきていると思います。
c : 大学進学って道が狭くなっていくって感じだと思っているんですけど。
なかがき : そうですね。専門性が高くなりますし。
c : だけど、なかがきさんの母校はいろんなジャンルの先生がいるから、工芸という道が広がっていく印象も持ったんですよね。
なかがき : そうですね。私も入学してからガラスや染織の先生の話を聞ける環境だったのですごくよかったなと思っています。
c : 大学の先生から言われた言葉で印象に残っているエピソードはありますか?
なかがき : ガラスを専門に扱っている方で、張先生という方がいらっしゃるんですけど。その先生から講評会で言われた言葉が印象的でしたね。
c : 講評会?
なかがき : 学期ごとに行われるもので、生徒たちが作ったものを自らプレゼンして先生からコメントをもらうんです。
c : 本格的ですね。
なかがき : 私はその時にティーセットを作ったんです。使いやすさに重点を置いて。カップの持ち手だったら指にフィットしやすいかとか、熱い飲み物を入れた時に指が触れにくいようにするとか。
c : 企業の商品開発みたいですね。
なかがき : そうですね。私は、講評会ごとに意見を取り入れてティーセットをバージョンアップさせていっていました。
c : なるほど。
なかがき : なんですけど、4年生の時に急に家をつけ始めちゃって。
c : このカップですね。最初から付いていたわけではないんですね。
なかがき : はい、そうなんです。ただ、つけてしまったら使いやすさというものがなくなってきちゃって。使い勝手も面白さも両立させるカップって難しいなって思っていた時があったんです。
c : はい。
なかがき : その時に、「なかがきさんは優しすぎていろんな人の意見を聞いちゃうけど、全部を聞く必要はないよ」っていう感じのことを言われて。
c : ほうほう。
なかがき : それを言われたから意見を聞かなくなったっていうわけではないんですけど、心の中にはずっとその言葉があって。
c : 自我を持つってことですかね?笑
なかがき : はははは!笑 そうですね!人の意見を取り入れさえすれば、合格点はもらえるっている打算的なところがあったんだと思います。
c : なるほど。
なかがき : でもそれはあくまでも合格点であって、正解ではないんだろうなって最近になって思うようになりましたね。
c : 深いですね。進学した先で素敵な先生に出会えたわけですね。
なかがき : はい。工芸というものがすごく好きになったきっかけにもなりました。
c : って考えたら、その先生がいてくれたから、今もこのカップに家が付いているのかもしれないですね。
なかがき : それはあるかもしれないです。そういえば、その先生と作品交換をしたんです。私はこの家のカップをお渡しして、先生からはガラスの置物をいただきました。それはすごく嬉しかったですね。「私のものと交換でいいのか?」みたいな!
c : 恩師の作品ですもんね!
【なかがきさんが張先生からいただいたガラスの置物】
なかがき : はい!まだ部屋に飾ってあります。
c : ちなみに、大学での授業で楽しかったものってありますか?
なかがき : いろんな授業があったんですけど・・・大原美術館に行って感想を書いたり、陶芸の授業も楽しかったし、、、あ、1つ。またガラスの話になっちゃうんですけど。。。
c : お聞きしたいです!
なかがき : ガラスコースの授業でワイングラスを作る授業があったんです。作ったワイングラスの形の違いでワインの味が変わるっていう試飲会をしたんです。
c : わー!楽しそう!!
なかがき : ちなみに私は陶芸コースだったのでワイングラスは作っていたなかったんですけど、試飲会だけ混ざってました。笑
c : いいですね〜。
なかがき : こういう形だと味が広がるね、とか。同じお酒でも味の感じ方に差が出てくるんですよね。帰りにはみんな酔っ払ってました。
c : 大学生って感じですね。笑
なかがき : 楽しかったですよ。笑 あと、ガラスコースは自主的な活動をしていたので。流しそうめん会っていうのを毎年やっていて。みんなで竹を割って、浴衣きて、ガラスの器を片手に流れてくるそうめんをすするっていうイベントもありました。
c : 素敵〜!!
なかがき : これも楽しかったですね。
c : 作ったものを実際に使うイベントっていいですね。
なかがき : そうですね。物々交換もしょっちゅうやってましたよ。染織の敷物をいただいたり、デザインのアクセサリーをいただいたり。
c : そういう物々交換をしてみたいです。
なかがき : あ、そういえば、、、ガラスの先生から言われたことはすごく印象に残っているんですけど。院生最後の講評会で陶芸の先生から「あなたは私のライバルです」って言われたんです。
c : めっちゃくちゃ嬉しい言葉じゃないですか!
なかがき : 卒業前の講評会までにモヤモヤしたこともあったんですけど、その一言で全部吹っ飛びましたね。
c : 同じ土俵に立たせてもらえたって感じられますよね。
なかがき : 「もしかしたら私いけるんじゃない?」って思ったり。笑 よくないですね。笑 ただ、今でもその言葉が陶芸を続ける中で頼りになっている部分はあります。
c : 頼れる何かがあるって大切にしたいですよね。
なかがき : そうですね。先生はもう忘れてるんじゃないかな。笑
c : 卒業してから先生に会いました?
なかがき : はい。先生が退官された時にお会いしました。似顔絵まで描いてもらいました。
c : そういえば、大学のHPをみた時に学部のリニューアルをしたと読みました。先生も変わったりしたんですね。
なかがき : そうなんですよ。工芸よりもちょっとデザインが強めになっていて。少し寂しいですね。
c : そういう変化もあったんですね。
なかがき : はい。ただデザインはいろんなところで使えますから。私も学んどけばよかったと思うことが多々ありました。名刺を作る時とか。笑
c : いいソフトが助けてくれますよ。
なかがき : そうですね。大学でちょこっと触れただけで作ってますからね。いいソフトです。泣
c : 院も含めて6年間、同じ先生に指導してもらうんですか?
なかがき : 実は1年生の時はコース選択がないんです。陶芸・ガラス・デザイン・染織を全部まんべんなく学んで、2年目で選択するんですよ。
c : おぉ!それはいいですね!
なかがき : そうなんです。なので「陶芸にするぞ!」って決めて入学していたんですけど、2年生になる時は結構悩みましたね。やっぱりデザインがいいんじゃないか、いやガラスも捨てがたい、みたいな。笑
c : やっぱりなかがきさんは創作に対する熱量が素晴らしいですね。
なかがき : だからもう1年欲しいって思いました。選ぶ時間が足りない!って。ただ、選択してから3年間あるわけなんですけど、3年でも足りないなっていうのが正直な気持ちでした。
c : 何かを作る、形にするっていうことが好きなんですね。
なかがき : 私にはそれしかないと思っています。
c : お、本日2回目ですね。だからこその迷いですよね。
なかがき : そうですね。デザインと迷ったのは、やっぱり将来性の部分ですね。
c : 急に現実的なお話。
なかがき : そこが私の悪いところというか、ちょっと世間の目を気にしてしまうところがあって。高校進学時に普通科を選んだ理由でもあるんですけど。
c : いわゆる「安定」というものがちらついたって感じですかね?
なかがき : デザインは今も強い業種ですし。
c : 個人でされてる方も多いですよね。
なかがき : 友人にもたくさんいますよ。いいなって思うことも多いです。
c : 確かに、デザインに対する需要ってなくならないですよね。求められるものが変わっていっても。
なかがき : そうなんですよね。
c : そこでいくと、焼き物もなくならない気がしますけど。
なかがき : そうですかね〜。
c : なくなっている印象がありますか?
なかがき : やっぱりデザインという業種と比べた時に、陶芸は昔ながらな部分が多く残っているっていう印象はありますね。一番は若手のなり手が少ないっていうことが問題な気がします。
c : ニュースでも陶芸に限らず、日本の伝統的な技術の継承者がいなくなっているってよく言われてますよね。陶芸も職人気質なイメージだけはあります。
なかがき : 若手不足が関係しているかは定かでないんですけど。興味があった佐賀にあった窯業学校が気がついたらなくなってましたからね。
c : いろんな要因があったんでしょうけど、焼き物が有名な県でそういうことが起きるとなんだか悲しい気持ちになりますね。
なかがき : ただ、逆にSNSの発展で陶芸に対する認識が見直されている気もしています。
c : 確かに、私たち世代やもっと下の世代も陶芸に興味を持っている印象はあります。波佐見の陶器市に行っても、若い方は多いですし。
なかがき : そうですね。私の勝手な見解なんですけど。工芸はデザインに淘汰されるって思っていた時期があったんです。
c : 淘汰!?
なかがき : というのも、私が大学在学中に不安に思っていたことがあって。母校の経営の流れが工芸部門の縮小とデザイン部門の拡大を進めているような印象があったんです。当時の私は自分の学んでいることは必要とされていないのではないかって思ってしまっていたんですね。それがデザインが活発になってきたら、工芸も盛り上がってきて。win-winでよくなるのがいいじゃないですか!!最近はそう思うようになってきました。
c : そうか〜。craftoryを始めた理由の1つに職人さんと食器を使う人の距離の遠さもあって。陶芸の職人さんと直接お話ししてから商品を購入できる機会って少ないと思うんですよ。
なかがき : 店舗から購入する方が多いでしょうね。
c : 陶芸業界と物理的な距離があることで、陶芸という世界が世間から隔離されてしまっているような気がするんです。もし世間的にそういう印象を持っている方が多かったとしたら、それは勿体無いですよね。
なかがき : 確かにそうかもしれないですね。
c : そして、陶芸ってなくならないと思うんです。縄文時代から続いている文化ですし!!
なかがき : そう言われれば、そうですね!笑
c : もっと職人さんがどんな人なのかを知る機会がもっとあってもいいんじゃないかな〜と思うんですけどね。また脱線させてしまいそうなので話を戻します。笑 なかがきさんは販売は以前からしているんですか?
なかがき : 実は結構前から細々と。本腰を入れ始めたのは窯を買った時からですね。
c : 窯を買われたのは2019年の9月でしたね。というと最近になるのかな。
なかがき : はい。その時に倉敷の方からお声をかけていただいて、展示をしたり。
c : それまでは講師のお仕事をされていたと伺っていますが。
なかがき : そうです。卒業してからは、陶芸の講師としてしばらく働いていました。
c : 講師という仕事に就いたきっかけがあったんですか?
なかがき : 陶芸を活かすってなったら、講師か作家かの2択だなって思ったんです。
c : ほうほう。
なかがき : 大学の先輩が勤めているところで募集が出ていると聞いて、応募したのがきっかけでした。そのままそこに受かったので、就職したんです。
c : なるほど。
なかがき : そしたら、たまたまその会社が福岡でも学校を開くことになって。研修期間をへて福岡に配属されたんですよね。
c : では、卒業してからすぐに福岡に?
なかがき : いえ、研修は大阪でした。なので3〜4ヶ月くらい大阪に住んでいましたよ。
c : そうなんですか。関西って楽しいですよね!!
なかがき : 大阪にいた時は、初めての就職っていうこともあって仕事仕事で疲れていて楽しむ余裕はなかったんですけど。笑 ただ、先輩方に恵まれて。プライベートでも大阪のことを教えてくれたり、展示会に連れて行ってくれたり。
c : 優しい方が多かったんですね。
なかがき : はい。職場で素敵な出会いに恵まれたことが嬉しかったです。
c : 講師をされていた時の記事を拝見したんですけど、生徒さんの感想の中に、明るくて楽しいっていう声があって。実際お会いして、その雰囲気がすごく伝わってきました。
なかがき : ありがとうございます!講師の仕事はすごく楽しかったですね。
c : どれくらいの期間されてたんんですか?
なかがき : 5年ちょいですかね。
c : 結構長い間されていたんですね。辞めてからはすぐに陶芸家として活動を?
なかがき : いえ、ちょっと期間があきました。友だちとフィンランドに旅行へ出かけたりしました。笑
c : え!フィンランド!いいな!!
【フィンランド旅行の思い出写真。今度は夏のフィンランドに行ってみたいそう】
なかがき : 同時期に辞めた友達がいて。オーロラを観に行こうと誘ってくれたんです。
c : 観れました?
なかがき : 観れましたよ!本当にあるんだって思いました。笑
c : いいな〜!
なかがき : ただ、めちゃめちゃ寒いですよ。笑
c : そりゃそうか!オーロラが観れるんですもんね!
なかがき : 行く時はユニクロにめっちゃ課金したら問題ないです。
c : 課金。笑
なかがき : 笑 靴以外はユニクロでいけると思います。
c : そういう体験を経て作るものが変わるっていうことはあるんですか?
なかがき : そうなりたいな~、と思っていたんですけど、特に変わらずでしたね。
c : ご自身の陶芸を貫いているんですね。
なかがき : 何かどこかで落ちてきたらいいなと思ってはいるんですけど、すぐには行動に移せなかったですね。
c : 変わるかなって思った部分があったんですか?
なかがき : 家を作っているから街並みをフィンランドっぽくできるかなって思ったんですけど。そういうわけでもなく。ずっと変わらないんだろうなって思います。
c : 変わらないよさもありますよ。私はこの家が好きですよ。
なかがき : わ!ありがとうございます。
c : 唐突なんですけど、北欧の家具ってカラフルなイメージがあるんですよね。
なかがき : 日本ではマリメッコが有名ですもんね。
c : ただ、今日本で流行っている北欧って素材は木で、色は白を基調にしたものが多いイメージもあって。
なかがき : 清潔感のある感じですね。
c : そうです!なかがきさんの家のカップはそういう類の清潔感を感じさせるというか。もちろんなかがきさんの世界観の中で作られているから全く同じ印象を受けるわけではないんですけど。
なかがき : なんだか嬉しいですね。笑 ありがとうございます。
c : なかがきさんのインスタで観たタコさんの絵皿は、このカップとは違ったテイストでまたかわいいなと思いました。
なかがき : 最近絵付けにはまっているんです。
c : 最近なんですね。
なかがき : はい。ずっとロクロを使って(家のカップのような)立体的なものを作っていたんです。だけど、ある時「丸じゃないものを作りたい」って思ったんです。
c : なるほど。
なかがき : それでレモン型のお皿を作りたいな〜と思って、とりあえず作ってみたんです。そしたら、なんかお皿が寂しくて。絵付けが映えるかなと思って描いてみたんです。
c : それで絵付けを?
なかがき : はい。初期の頃は、家だったり電球だったり人工物を描いていました。家のカップを作り続けていることもあって、人工物が好きだなって思って。
c : 確かにお家の絵付けが付いているものも素敵ですね。
なかがき : そういう試行錯誤をしているタイミングで出店のお話をいただいて。当初のレモン皿よりも大きなサイズのお皿も作ってみたいなと思って、出来たのが玉ねぎ型と雲型って呼んでるお皿たちです。あとは四ツ花型っていうのもあります。
c : いろんな形が登場したんですね。
なかがき : ちなみに型の呼び方は定着していないです。笑 呼び方が変わることもあります。
c : 自由。笑
なかがき : このお皿の形が出来て、絵付けをしようってなった時に人工物を描いても良かったんです。ただ、広く受け入れられるのは動物や植物だろうなという考えもあって。そこから生き物の絵を描くようになったんです。
c : 新しいものにチャレンジしてみたと。
なかがき : そうですね。そしたら植物や動物を描くこと自体が楽しくなっちゃって。
c : 表情が1つ1つ違ったりして、それがまた愛くるしい印象を受けます。この色合いも素敵ですよね。
なかがき : これは鉄絵というもので描いています。身近な例でいうと唐津焼とかでよくみられますね。茶器でよく使われるちょっと渋めのものです。
c : ただの絵の具ではないんですね。
なかがき : 伝統的なものなんですけど。ちょっとずつ色に深みがあって、この色合いが面白いなと思っているんです。かすれ方も水彩画のようでもあり、木版画のようでもあり。その鉄絵と陶芸用品で買える一般的な絵の具を組み合わせて、面白い表現ができたらいいな〜と思いながらやってみました。
c : 絵付けといってもいろんなやり方があるんですね。
なかがき : 絵付けっていろんな人がやっていたから敬遠していたところもあったんですけど、やってみたらいろんな発見があって面白いです。
c : 新しい世界が広がった感じですね。
なかがき : そうですね。だからか、ずっと人工物をテーマに作品を作っていこうと思っていたのに、今は揺らいでる時期なんです。自分の作品が動物に寄せていっている気がして。笑
c : 家のカップとテイストは違いますもんね。
なかがき : はい。なので、どこかで合わせられないかなとは思っているんです。
c : それはまた何か新しいものが生まれそうですね。この絵付けはあらかじめ下書きなどをしてからお皿に描いていくんですか?
なかがき : 下書きはしていますが、アイディアスケッチなどは最近は書いていないですね。イメージを直接皿に描いています。 最近は植物を描いたあとにパズルのピースを埋めるような感じで動物を描いているんです。そうすると可愛いぞっていうジンクスを見つけました。笑
c : 確かに可愛い!!
なかがき : こういうインスピレーションはイラストレーションからもらうことも多いんです。今はいろんな方がインスタに作品を投稿しているのですごく勉強になります。
c : SNSっていろんな発見のある場所ですよね。
なかがき : はい。SNSをみていて、イラストレーターさんが陶芸に参入してきたら恐ろしいことになるんじゃないかと思うことがあるんですよね。
c : コラボできたら面白いですね!
なかがき : 恐れ多いですけど、いいですね〜。私が欲しいですよ、そのお皿。笑
c : この先、やってみたいなって思っていることってあるんですか?
なかがき : ん〜、先を見据えるのが本当に苦手で。。。今の窯のサイズだと小さいお皿しか焼けないんです。おかずをのせて欲しいと思っても、ケーキしかのらないとか。もっと用途を広げて作ってみたいな〜と思っています。
c : 機能性の部分にこだわって作られていますよね。
なかがき : そうですね、商品と作品の違いってなんだろうって考えたりするんですけど。私が家のカップを作り始めた時はティーセットとして作っていたので「町」っていう名前をつけていたんですよね。さらに黒土を使っていたので、「夜町」ってつけていたんです。
c : おしゃれですね。
なかがき : こんな風に名前をつけていたってことは作品に近いものを作っていたんだと思います。一方で、商品であることから離れたくないっていう思いから機能性も求めていたというか。
c : 葛藤の末にできたカップだったんですね。
なかがき : そういえば、大学の先生から「タイトルをつけるっていう意味をもう一度考えた方がいい」って言われたことがあって。
c : 意味?
なかがき : はい。でもずっと答えが出ていないですね。
c : それは答えがでなさそうな深い問いのような。。。
なかがき : 私の中でもわかりかけるような、やっぱり分からないような状態がずっと続いていますね。
c : 分からないからこそできる作品もあるように思いますけど・・・
なかがき : 私は分かりたいんです!そうしたらもっと自我が強くなると思うんですよ。
c : なかがきさんからお話を聞いてみて、ご自身の中で完全に腑に落ちた時に持つ自我の強さがすごく強い印象を受けました。
なかがき : たぶん頑固なんです。ただ自分でも気づいていないだけで。
c : それに気づいた時に、違うものが生まれる可能性も秘めていますね。
なかがき : はい。それがわかった時にはwindowsからmacに変わるくらいの変化はあるかもしれません。笑
c : 笑 では最後に、陶芸を始めて良かったですか?
なかがき : 良かったですよ!陶芸がないと私の自我は存在していなかったと思います。私の指針です。
c : 「指針」ですか。
なかがき : 知っちゃった以上、戻れないところなんでしょうね。知らなければ苦しかったと思うし。本当にあって良かったと思います。
c : 始めて良かったというより、「あって良かった」ですね。
なかがき : そうですね。陶芸はハードルが高いイメージを持っている方もいるかもしれないですけど、とても入口が広いと思います。
c : ほう!
なかがき : ただすごく深いので、どこまでいくかはその人次第ですけど。
c : マニアなのかオタクなのかってことですかね?笑
なかがき : そうか??笑。。。そうなのかもしれないですね!笑 今は陶芸教室という素晴らしいところがあるので。ぜひいろんな方達に触れ合ってみてほしいと思います。
c : 最後は陶芸教室の宣伝になっちゃいましたが、今日はお時間をいただきありがとうございました。すごく楽しかったです。
なかがき : こちらこそありがとうございました。
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次回はなかがきさんの作品を紹介します。
\\ 作品紹介は9/6(日)21:00頃更新予定 //
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